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最高裁判所第一小法廷 平成5年(行ツ)137号 判決

福島市新町五番二六号

上告人

持地トラ

福島市森合町一六番六号

被上告人

福島税務署長 高橋良一

右指定代理人

須藤義明

右当事者間の仙台高等裁判所平成四年(行コ)第一三号所得税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が平成五年五月二四日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係の下において、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小野幹雄 裁判官 大堀誠一 裁判官 味村治 裁判官 大白勝)

(平成五年(行ツ)第一三七号 上告人 持地トラ)

上告人の上告理由

第一点 河川法施行法第一九条による「旧河川法施行規程」の法文によると、第九条「河川法施行前ニ私人ノ所有権ヲ認メタル河川ノ敷地ニシテ荒地ニアラサルモノハ従前ノ所有者若ハ其ノ相続人ノ請求ニ因リ都道府県知事ハ公益ヲ妨ケサル限ニ於テ其ノ占用ヲ許可スヘシ」であるから、占用不許可処分は「公益」を妨げると河川管理者(建設省東北地方建設局長が本件荒川河川敷の河川管理者である。)が判断した結果の行政処分である事実がある。そこで「公益」とは何か。この場合は福島市営荒川運動公園敷が本件補償金(原判決引用)の対象地に当たるので、右都市公園法による公園(公園管理者は福島市)の設置に係る公益であることは明白である。

(第十二条の二「都市公園の設置及び管理に要する費用の負担原則」「都市公園の設置及び管理に要する費用は、この法律及び他の法律に特例の定めがある場合を除き、地方公共団体の設置に係る都市公園にあっては当該地方公共団体の、国の設置に係る都市公園にあっては国の負担とする。」の都市公園法の法文がある。)

右の通りこの場合の益とする「公益」は都市公園法の右「公園敷使用」となる。

右と同様にして「旧河川法施行規程」の法文において、

第一〇条「都道府県知事ニ於テ従前ノ所有者若ハ其ノ相続人ニ前条ノ占用ヲ許可セサルトキ、又ハ之ヲ禁止スルトキハ都道府県ハ相当ノ補償金ヲ下付スヘシ

〈2〉 公共ノ利益トナルヘキ事業ノ為前項処分ノ必要ヲ生スルトキハ都道府県知事ハ其ノ事業ノ許可ノ条件トシテ其ノ執行者ヲシテ補償金ノ全部若ハ一部ヲ負担セシムルコトヲ妨ケス

〈3〉 河川ニ関スル工事ニ因リ下付ノ必要アル第一項ノ補償金ハ其ノ工事ノ予算費用中ニ算入スヘシ」

とある。

よくよく第一〇条の右法文を参照すると、本件補償金(原判決より引用)は右第一〇条二項においては福島市の都市公園設置に係る工事を指し、右第一〇条三項においては建設省の荒川河川環境整備事業施行の工事のそれぞれの工事費用に係るべき性格のものであることが判る。

まとめて述べると本件訴訟の争点である本件補償金は次の通りで、

(一) 福島市が本件補償金を負担する場合は都市公園法第十二条の二に従って公園設置工事費に算入する。以下第二項と言う。

(二) 建設省が本件補償金を負担する場合は旧河川法施行規程第一〇条三項によって荒川河川環境整備事業の工事費に算入する。以下第三項と言う。(被上告人の平成四年八月二四付答弁書自一〇ページ至一二ページ記載の「経過内容」の表を参照すると判る。)

本件補償金の性格は、右の通り、都市公園法第十二条の二(荒川運動公園は福島市営の都市公園法の公園である事実による。)及び旧河川法施行規程第一〇条一項(補償金下付義務)、同条第二項(福島市への本件補償金の負担を条件とする事業許可)、同条第三項(建設省の河川に係る工事費用への本件補償金の算入義務)に従うべきものであることは明らかである。

右第二項(福島市の本件補償金の負担行為)は実際には生じなかったので第三項(建設省の本件補償金の負担行為)による本件補償金が問題となる。

(三) 本件補償金は第三項の「河川に関する工事費用に算入すべき補償金である。」(右第三項の規定による。) ところで旧河川法施行規程第九条(占用許可義務)と同法第一〇条一項(占用不許可に伴う補償金下付義務)を解釈すると、(上告人の平成五年三月三日付準備書面陳述に詳論した通り)国の占用許可義務が次の行政処分である「不許可処分(本件補償金の場合は、昭和六三年八月二九日付東北地方建設局長の建東福河管第一七六号の不許可処分書)」によって国の補償金下付義務へ転換されるのである。

そこで土地収用法第二条(土地の収用又は使用)に言う「収用」の意義及び同法第三条一項二号(堤防、護岸、ダム、水路、貯水池その他の施設)を参照すると、右建設省(一級河川の河川管理者)の「不許可処分」が法律論として、占用権(原判決で言う「占用を期待できる権利」に同じ。国の占用許可義務に対応する債権。)を補償金(国の補償金下付義務に対応する土地所有権相当額の金銭債権。)へ転換する行政処分であることが判る。

右の通り上告人の占用権(租税特別措置法三三条一項一号及び二号に言う「資産」)が即刻「(占用)不許可処分」によって強制的に上告人の補償金請求債権(国の補償金下付義務に対応する。)へ転換し、右占用権に伴う資産は消失するのであるから、これは右「収用」に相当する。

原判決はその「第三争点に対する判断」において「措置法三三条一項一号及び二号に規定する「土地収用法等の規定に基づく収用に伴う補償金又は収用を前提とした買取りによる対価を取得する場合」にも当たらない。」と本件補償金を認定しているが失当である。

(四) 本件補償金は土地収用法等による収用(租税特別措置法三三条一項一号)に当たるか、収用を前提とした買取りの対価(租税特別措置法三三条一項二号)に相当するものである。(これは右述べたる通り占用の不許可処分に伴う本件補償契約によって生ずる本件補償金であるからである。)原判決は「本件補償契約による本件補償金」に着目する余り、その前提である国の占用許可義務(上告人の占用権と言う資産取得)と国の占用の不許可処分(右資産を金銭債権(転換させる行政処分)に対する認定に不足があり、審理不尽の違法と判決に至る理由不備の違法を犯すものである。 さらに言えば、河川法施行法第一九条(河川敷地等の占用の特則)及び同法第四条(旧法による河川敷地等の帰属)、さらに旧河川法施行規程第九条(国の占用許可義務)同法第一〇条(占用の不許可処分と国の補償金下付義務。及び補償金の河川工事費用への算入義務等)と土地収用法第二条(土地の収用又は使用)同法第三条一項二号(土地を収用し又は使用することができる事業)との関連において、原判決は右法令違背の解釈の違法があると言わなければならない。(右民事訴訟法第三九四条)

土地収用法等における「収用」の意義(租税特別措置法三三条一項一号及び二号。同法三三条の四の一項、四項五項六項に対応するもの。)の認定の誤りが審理不尽の基因であって理由不備の原判決を招いたものである。「収用」とは公益のための強制的買取り等を定義とするは明らかで、右の通りであるから、原判決は違法であり、破棄さるべきである。

以上

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